第5話 「いけないメナ先生」


 耳をいただいた方々。ごにんめ「mena」さん:ローグ



 ぼくよりひとつレベルが高かったひとを誘ってみた。 

 彼女は、はなしかたも丁寧かつ親切で、「少ししかいっしょに冒険できな

いけど」と応じてくれた。 

 もう、ホント親切かつ、いい人だった。以下、会話を要約。 



Mena :「アーマークラスはいくつ?」 

G(ぼく):「**です」(←サバ読んで少なく報告) 

Mena :「わたしの弓は当たるといたいから気をつけて」 

G    :「ぼく、レベルは**だけど、いいアイテムに恵まれなくて、弱

      いんです。リングとか持ってないし」 

Mena :「お金は?」 

G    :「PKされて、みぐるみはがされて...」 



 と、まあ、我ながら、よくも嘘を並べたな。感心するぜ。 

 実は、前回のローグ「Mitu」さんをレイプしてたもんで、装備はかな

り強化されてたし、フトコロもほっかほか。PKされたどころか、テメーが

やってんだよ。 

 しかし彼女は、ぼくをフビンに思ったらしく、出るゴールドやアイテムは

片っぱしから、ぼくにくれ、祭壇も使わせてくれた。「祭壇は危険なものも

あるから気をつけて」と教えてくれた。実は「Tamon's Diablo Page」の祭

壇の効果一覧表は、しっかり読んでるし、武器やスペルや特殊効果の一覧表

もプリントアウトして手元にあるだけどね。 

 そして戦う時は、つねにぼくの前に出て、かばってくれて、「きみは前に

出すぎ」などとアドバイスしてくれた。

 イエッサーッ! 女教官殿!! ぼくはあなたのケツを追い回すストーカー

となりマス。 

 彼女は、初心者をフォローする戦い方もうまく、ぼくは、どんどん力を蓄

えた。彼女は、弓がすり切れるまで、ぼくのために戦ってくれる。彼女の弓

のDURが1になったそうで、町に戻った。

 プレイはうまいし、圧倒的に僕よりつよいし、アイテムを識別して「これ

をつかうといいよ」と渡してくれた。それより、いい剣もってたんだけど、

彼女にわるいので装備したり。 

 さすがにこの人は殺せないな、もう、いたれりつくせりだし。と、思って 

ふたたびダンジョンに戻った時に、またもや赤い光弾を連射するウマ野郎と 

弓矢スケルトン20体ほど。画面が重くなるほど矢がとびかう中、ぼくは、

「FAST BLOCK」のシールドなんかがあるため、それほどダメージ

は負わなかった。だけど彼女は、まるでぼくを守る盾となり、自ら血路を開

こうとするのか、突撃をくりかえした。 

 彼女の体にカーソルをあわせると、体力が10%を切る時すらあった。

 ぼくは、まちがえてヒールアザーを使いそうになったけど、冷静に、パー

ティーアタックをONにして、乱戦にまぎれて彼女に一撃入れた。

 しかし、彼女はやはり強い。ぎりぎりのところで体力全快。 



Mena:「ごめん」 



 突然、彼女があやまった。どうやら、ぼくを守りきれないこと、敵の小ボ

スを始末できないことをわびているようだった。ぼくの裏切りなんかに、ま

るで気づかず、ふたたび突撃・・・そして、絶命。

 なんと、即座に再スタートし、ぼくをフォローするために、ポータルも使

わずに(ぼくはもっているけど使わない)かけつけてきた(とのメッセージ

が送られてきた)。

 ぼくは得意の盾をたよりに弓兵を片づけ、強力な彼女のアイテムを回収し、

駆けつけてきた全裸の彼女を斬殺。 

「それはないでしょ・・・」 

 それが彼女の最後のセリフだった。 

 ぼくが盗んだのは大量のアイテムでもゴールドでもなく、彼女の「まごこ

ろ」ではなかったか・・・



 つづく 


← もどる(BACK) ↑ ホーム(HOME) → すすむ(NEXT)